バンデューラのモデリング理論とはいったいなんなのでしょうか。
今回は、心理学者バンデューラについて紹介した後、バンデューラのモデリング理論について解説していきます。
バンデューラって誰?
まず、バンデューラっていったい誰なのでしょうか。
アルバート・バンデューラはカナダ人の心理学者です。
1950年の後半に、行動主義学習理論の中で、社会的学習理論(これが今回紹介するモデリングの理論のことなのですが)を提唱したことで有名です。
彼自身、1925年にカナダで生まれ、1952年にアメリカのアイオワ大学で臨床心理学の博士号を取得し、スタンフォード大学で教授に就任しています。
バンデューラがこれだけ有名になったのは、「20世紀の著名な心理学者」にて、第4位を取ったことも影響していると思います。
それが2002年なのですが、2014年にはアメリカ国家科学賞を受賞し、翌年当時のオバマ大統領からメダルを授与したことで知られています。
それでは、バンデューラのモデリング理論についてみていきましょう。
子どもはどうやって学んでいるの?
よく子持ちの方はお思いになると思いますが、
「教えてないのに、この子はいつ学んだのだろうか」
「子どもの行動が自分とよく似るようになっている」
ということを経験しませんか?
これは、人が観察によって学ぶということが関係しています。
バンデューラのモデリング心理学では、観察学習理論などと呼ばれたりしますが、主体と外的結果を重視するスキナーの行動主義心理学の理論を、主体と外的結果だけでなく、他者と内的過程を含むようなものに拡張しています。
つまり、人は観察によって学ぶのですが(つまり経験することは)直接経験と代理経験と呼ばれる二つに分けることができます。
直接経験とは字の通りですが、自分が直接体験することを言います。それに対して、代理経験とは、ほかの人の経験を見たり聞いたりすることをいいます。
以前の心理学では、人の経験は直接経験から学んでいるとされていました。つまり、直接強化・直接的学習ということです。
ですが他者の行動を観察することによって学ぶ、むしろそれだけで学ぶ社会的強化・社会的学習・観察学習がなく、その考えを実験を通じて取り入れたのがバンデューラのモデリング理論になります。
社会的学習のわかりやすい例として、お葬式などで人が神妙な顔をしている状況を考えてみます。
そこでは、もともと笑うと怒られ、静かにしているとよしよしされることによって笑うことが弱化されて悲しむことが強化される、というスキナーの理屈がありましたが、
バンデューラは、それに疑問を持ち掛け、実際に自分が起こられたりされなくても、ほかの人がそうされているのを見ることによって、代理的に強化や弱化を体験して、学習しているというパターンがあるという話があります。
これを考えてみると、確かにそうですね。
バンデューラの有名な実験「ボボ人形実験」ってなに?
このバンデューラの観察による学習という考え方は、この「ボボ人形実験」という1961年から1963年に行われた有名な実験によって明かされてきました。
それでは、ボボ人形実験とは具体的にどのような実験なのでしょうか。
ボボ人形というのは、空気で膨らませてあるビニール人形のことなのですが、これを子どもを対象として3つのグループに分けて次の実験が行われました。
その3グループをA,B,Cとします。
A:大人たちが攻撃的な態度をとり、ボボ人形をたたいたり蹴ったり、罵声を上げたりしている映像を見せる
B:大人たちが、Aとは違って一切攻撃的にならずボボ人形ではあそばず、ほかのおもちゃで遊んだり静かにすごしている映像を見せる
C:何も見せない
これらの後に、それぞれの子どもたちをボボ人形と他のおもちゃがある部屋に入れると、次のような様子が見られました。
それが、AグループはB,Cよりボボ人形に対して攻撃的な言動をはるかに多く行っていることがわかりました。
これは、他者の行動から学習している、すなわち社会的学習をしていることだということはすぐわかると思います。
バンデューラのモデリング理論とは?
以上のボボ人形実験をもとにモデリング理論を発展させ、バンデューラはそれを社会的学習理論としてまとめました。
これは、今まで言っていた通り自分以外の人の行動を観察することによって、人は学ぶことができるという理論になります。
これによって、直接経験だけでなく代理経験も学習の要因となることがわかるようになったわけですね。
それでは、バンデューラのモデリング理論について詳しく見ていきましょう。
モデリング理論の過程について
バンデューラのこのモデリング理論は、次の4つの過程により示されます。
注意過程
これは、実験のグループにわけ映像を見せているときに、モデルとなる大人たちのことを特徴づけて観察している過程のことを言います。
保持過程
これは、モデルを観察した後、記憶するフェーズのことですね。
なにかを学習する過程で、記憶しないと模倣することはできないので、頭の中に対象となるモデルの特徴や行動などを記憶し、保持するというフェーズになります。
運動再生過程
上で、記憶について話し、それに含まれるのですが、これはよりアウトプットに近い言い回しになります。
つまり、記憶からとりだし、対象となっていたモデルの行動を自分で再生するというフェーズです。
これは、再生しながら自分で行動しているので模倣段階でもありますね。
動機付け過程
これは、モデルを模倣している段階でその行動を続ける動機付けに関する過程となります。
モデルの行動を模倣したことによって得られる満足感などから動機付けをしていくということになります。
こどもは自分ではなく、外発的動機と呼ばれる周りの人からほめられるという動機付けも存在しています。
それとは逆に、内発的動機はさきほどいった満足感や楽しさなどの自ら発する動機のことを言いますね。
モデリングはどのように応用されるのでしょうか?
以上からわかる通り、バンデューラのモデリング理論は自分以外の人の行動を観察し、模倣しようとすることによって学習するということを理解できました。
それは心理学的にどのように応用されるのでしょうか?
バンデューラが実際に行っていた応用方法として、モデリングを特定のなにかに対して恐怖症がある方に対して、それを克服するために応用していました。
つまり、モデルが恐怖症の対象となるもの例えば犬などとすると、モデルが犬とかかわっている動画を観察することによってその恐怖症への考え方見え方が変わってくるため、克服することができるというわけですね。
子どもの学びはモデリング?
それでは、最初に話した子どもに「教えていないのにどうしてできるのか」や「自分の言動に似てきた」といった行動の理由がわかってきたと思われます。
これは、モデリング理論そのものなのですね。
子どもにとって身近な人は大人、その親であることがほとんどです。つまり、親がモデルの対象となるわけですね。
つまり、子どもはその親をみているだけで行動も似てくるし、だれかほかの人をあこがれとしている場合、その人がやっていることを観察して学ぶことによって、自分が教えていないことをやっていたりするということがあります。
これから考えられる通り、親は子どもに見られている、観察されていることを忘れてはなりません。
子は親を見て学ぶといわれる通り、親の行動は常にこどもに監視され、モデルとされているので、このモデリング理論を理解することが、それを改める一つの手段になったらいいですね。
社会的学習理論と自己効力感の関係について
ここでは、あまり詳しく説明しませんが、バンデューラの自己効力感という考え方もあります。
軽く説明すると、人が行動決定する際にその要因とされるものが3分類されます。
それは、先行要因、結果要因、認知的要因の3つなのですが、その先行要因の予期機能において効力予測と結果予測があります。
予期機能は、その名の通り、行動の結果に対する予測であり、どうせ~できないと思っていると、行動をやめてしまう原因となりますが、そこで自己効力感を高めることができれば、行動が実際に可能になるということです。
それのどこが社会的学習理論と関係しているのかというと、社会的学習理論とはこの行動要因3つを生み出した理論なのであります。
つまり、この中に自己効力感があるというわけですね。
気になる方は、詳しく調べてみてくださいね!!
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